2009年6月4日木曜日

日本の美

日本初の海外観光ツアーが、ちょうど100年前朝日新聞社主催で敢行された。
1909年のことだ。同行した記者の一人が次のようなことを書き残している。
「冬はローマですごし、春夏はロンドンで、秋には東京へ戻り、そうして最後はベニスで死にたい」
ヨーロッパは素晴らしかったのだろうが、年に1度は日本へ戻りたいという感覚はよくわかる。
海外にいると、日本における人とモノとの親密な関わり方が恋しくなるのだ。

食べものであれ、建てものであれ、飾りものであれ、何であれ、四季に恵まれた島で、あふれんばかりの海の幸、山の幸に囲まれ、私たちはバイオリンで言うと、ストラディバリウスのような深みと奥行きのある営みを奏でてきた。
世界でも稀な国だと思う。
もちろん、これは美しい面のみをコラージュした上での話で、現実は思うほどすっきりしてはいない。
なぜなら、私たちが誇れるのは、あくまでもセンスの次元でのことだからだ。
どの国の文化にも奥行と深みはあって、違いはどれくらい精緻かということにかかっている。
私たちは、線からはみ出るものを好まない。

この資質は、何ごとも整えようとする強い力となって私たちの社会を支配する。
日本の美しさ、良さは、秩序や平衡に通じるのだ。
地下鉄銀座線のホームで、乗車位置変更に伴う整列方法の変更のお願いという張り紙に苦笑しつつ 思ったことである。

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