大林宣彦氏がCMディレクターとして活躍されていたころ
TVCMは鍵パズルのようなものだと語られていたことがある。
新人だった私は監督を取り巻くスタッフ陣の隅にいて、 話を聞いていた。
スポンサー・代理店・視聴者そして、われわれ制作者がいる、と監督は言った。
それぞれの異なる思惑を調整し、巧みにパズルを完成させるのが、
監督の手腕だな。
滔々と述べられる中、だからいわゆる独創性とは別次元の仕事なのだと言われたことを よく記憶している。
まだ今ほど同一商品のあふれる社会ではなかったが、核心をついた意見だと思った。
その後、マスの魔法が解け、効率とパフォーマンスに重きを置くマーケティング主導の時代となった。
マーケ主導の顛末を見るには、ファッション業界を例にとるとわかりやすい。
今や独創的なデザインは影をひそめ、ボリュームとして売りきるために
その時々の我らが求めるデザインが、すばやく提供されるようになった。
真の意味の驚きとか発見からは程遠い明快な世界観がそこにある。
ユニクロはファッションには分類されないが、典型的だし、
今や農業から公共事業、何から何までマーケティング力が問われている。
マーケティングが研ぎ澄まされればされるほど、私たちは淀みない世界を生きることになるのだが
中心にあるのは経済感覚でしかないので、私たちを本質的に揺さぶれない。
もちろん、何から何までには、広告産業も含まれる。
制作者たちはもの作りの達人として職務を全うしていることに変わりはないが、
渡される設計図は魅力的とは言えないものとなっている。
21世紀における鍵パズルとは何か。
もう一度考えてみた方が良いのではないか。
広告までつまらなくなる必要はないのだから。

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